『枕草子』七十二段「ありがたきもの」の現代語訳をご紹介します。
『ありがたきもの。舅(しゅうと)にほめられる婿(むこ)。また、姑(しゅうとめ)にかわいがられる嫁。毛がよく抜ける銀の毛抜き。主人の悪口を言わない従者。ほんのちょっとした癖もない人。容貌、性質、姿かたちも優れていて、世間をわかっていくとき、少しの非難すべき点もない人。同じところに住んでいる人で、お互いに相手を優れたものとして尊敬しあい、わずかのすきもなく気をつけていると思う人・・・』
ありがたきは、漢字で書くと「有難き」。めったにない、という意味になります。
ありがたいと思える人や場面があったとしたら、感謝の気持ちを持つことが大切です。
徒然草
『徒然草』第百二十三段の現代語訳をご紹介します。
古典から、生活の原点を学ぶことができます。
『人間として、生きていくために必要なことと言えば、第一に食物、第二に衣服、第三に住居だ。人間の重要時はこの三つ以上にはない。飢えず、寒くなく、風雨の害に侵されないで、静かに日を送るのが、人間の楽しみなのだ。ただし、人間には皆病気がある。病気にかかればその苦悩は耐え難い。だから病気治療のことを忘れてはならない。以上の三つに治療のための薬を加えて、この四つのことを手に入れないのを貧乏とする。四つのことに不足しないのを富んでいるとする。四つ以外のものを求めて、あくせくするのを贅沢だとする。この四つのことを切り詰めて生活するならば、誰が不足を感じることがあろうか』
私たちはいつの間にかぜいたくになってはいないでしょうか。
人生の一部
元プロ陸上選手の為末大さんの実話です。400メートルハードル日本記録保持者でもあります。
為末選手は、2008年の北京オリンピックで敗退し落ち込んでいるときに、一緒に敗退した選手と競技場からの帰りのバスで一緒になりました。その選手は落ち込むことなく、「明日、一緒に万里の長城に観光に行かない?」と誘ってきました。為末選手は、『僕にとっては競技が人生そのものだったけれど、彼にとっては人生の一部が競技なんだなあ』と感じたそうです。
競技は、『受験』とか『仕事』とかにも置き換えられると思います。