石川町駅中華街口から徒歩30秒
中学受験国語専門塾です

アドラー心理学⑥

・アドラー心理学では、他者からの承認を求めることを否定する。身近な場面で考えてみよう。例えばあなたが職場でゴミ拾いをしたとする。それでも、周囲の人々は全く気づかない。あるいは、気づいたとしても誰からも感謝されず、お礼の言葉ひとつかけてもらえない。さて、あなたはその後もゴミを拾い続けるだろうか。承認欲求の危うさはここにある。

・人はどうして他者からの承認を求めるかというと、多くの場合、それは賞罰教育の影響だ。適切な行動を取ったら褒めてもらえる。不適切な行動を取ったら、罰せられる。アドラーは、こうした賞罰による教育を厳しく批判している。賞罰教育の先に生まれるのは、「褒めてくれる人がいなければ、適切な行動をしない」「罰する人がいなければ、不適切な行動をとる」と言う、誤ったライフスタイルだ。

・他者からの承認を求め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的には他者の人生を生きることになる。われわれは「他者の期待を満たすために生きているのではない」のだ。同時に、他者も「あなたの期待を満たすために生きているのではない」のだ。相手が自分に思通りに動いてくれなくても、怒ってはいけない。それが当たり前なのだ。

・アドラー心理学は、放任主義を推奨するものではない。放任とは、子どもが何をしているのか知らない。知ろうともしない、という態度だ。そうではなく、こどもが何を知っているのかを知った上で、見守ること。勉強について言えば、それが本人の課題であることを伝え、もし本人が勉強したいと思った時にはいつでも援助する用意があることを伝えておく。本人に意向を無視して「変わること」を強要したところで、あとで強烈な反動がやってくるだけだ。

・もっとも大切なのは、子どもが窮地に陥ったとき、素直に親に相談しようと思えるか、普段からそれだけの信頼関係を築けているか、である。

・本を読むとき、顔を本に近づけすぎると見えなくなる。それと同じで、良好な人間関係を結ぶには、ある程度の距離が必要だ。とはいえ、距離が遠すぎてもいけない。親が子どものことをずっと叱ってばかりいては、心が遠く離れてしまう。これでは子どもは親に相談することさえできなくなるし、親の方も適切な援助ができなくなるだろう。差し伸べれば届く、けれど相手も領域には踏み込まない。そんな適度な距離を保つことが大切だ。

scrabble tiles on blue surface
Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels.com