走る哲学者ともよばれている為末大さん。400mでシドニー、アテネ、北京オリンピックに出場されています。
「スランプの時、自信がない時、人は後から考えると驚くほど近視眼的になっている。人の言葉に左右されたり、ふらっと何かを妄信してしまうのもこの時期。辛い時期に、こうだと答えらしきものを言い切ってくれるものに人は弱い。でも直接的に人が答えをくれることはない」
「僕の知っている範囲で、スランプに耐えて抜け出た選手のほとんどが持っている要素は、楽天性。なるようになるしかないさという、どこか他人事のような軽さがありから、迷路に入り込んでしまいそうになる時にふっと顔を上げて遠くを見渡す事ができるんじゃないかと思う」
「一番ひどいスランプの時に、子どもの頃走ったグラウンドに行って、そもそもなんで走っているのかを思い出した経験がある。楽しんでいるかい?ふと自分にそう問いかけるような事すら、人は忘れている。原点に触れるという事が僕にとっては大事だった」
「アスリートがスランプの時、メンタルトレーナーはメンタルに問題があると言い、栄養士は食事に問題があると言い、整体師は身体のバランスが悪いと言う。これも真実」
少年の夢
哲学者の梅原猛(うめはらたけし)さんが、「少年の夢」というタイトルで高校生のために講演をされたことがあります。人はだれでも心に傷(=コンプレックス)がある。だから夢を見る、という内容です。
「私で言えば、背が低いし、兄弟でいちばん顔が悪い。そういうことが、すごいコンプレックスになっているんです。姉さんは美人なのでちやほやされたけれど、私は子どもの頃からいつも姉さんと差をつけられて育った。そんなことが、心を傷つけ、どこか深いところでコンプレックスになっているんですね。そういう、コンプレックスを盛った人間のな
かに、巨大な夢を持ち、すごく創造的なことをする人間が出てくるんですよ」
「皆さんにも、コンプレックスに悩んだり、悲しんでいる人は多いと思います。だけど、心に傷があっても、それを悲しんではいけないんです。悲しんで自暴自棄になったら、自分を滅ぼしてしまう。そうじゃないんですよ。本当に夢見る人間というのは、どこかに深~い傷を持っているんです。皆さんの傷が深ければ深いほど、素晴らしい夢を見る人になりうる。そう考えるといいですね」 ノーベル賞をとった湯川秀樹さんも家族全員が天才一家というコンプレックスがありました。受験生は、伝記を読むと心が強くなれます。苦労せずに、何かを成し遂げた人はいないことが確認できると頑張