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墓碑銘


村上春樹、かく語る

『個々のタイムも順位も、見かけも、人がどのように評価するかも、すべてあくまで副次的なことでしかない。僕のようなランナーにとってまず重要なことは、ひとつひとつのゴールを自分の脚で確実に走り抜けていくことだ、尽くすべき力は尽くした、耐えるべきは耐えたと、自分なりに納得することである。そこにある失敗や喜びから、具体的な―どんなに些細なことでもいいから、なるたけ具体的な―教訓を学び取っていくことである。そして時間をかけ歳月をかけ、そのようなレースをひとつずつ積み上げていって、最終的にどこか得心のいく場所に到達することである。あるいは、たとえわずかでも、それらしき場所に近接することだ。(うん、おそらくこちらの方がより適切な表現だろう)』

さらに私が大好きなのは、本の最後にある表現です。最後までやり続けたといえるものを一生のうちにいくつ積み上げることができるでしょうか。

~もし僕の墓碑銘なんてものがあるとして、その文句を自分で選ぶことができるのなら、このように刻んでもらいたいと思う。

『村上春樹 作家(そしてランナー) 1949-20** 少なくとも最後まで歩かなかった』

太っていく体質

『僕は何もしないで放っておくとじわじわ太っていく体質である。それとは対照的に、うちの奥さんはどれだけ食べても(量は食べないけれど、何かあると甘いものを食べる)、運動をしなくても、太るということが全くない。贅肉もつかない。そのことで僕はよく「人生は不公平だよな」と思ったものだった。ある人が努力しないことには得られないものを、ある人は努力しないでどんどん得ていく。しかし考えてみれば、そういう太りやすい体質に生まれたことは、かえって幸運だったのかも知れない。つまり僕の場合、体重を増やさないためには、毎日ハードに運動をし、食事に留意し、節制をしなくてはならない。しんどい人生だ。しかしそのような努力を怠りなく続けていると、代謝が高い水準で保たれ、結果的には身体は健康になり、頑丈になっていく。老化もある程度は軽減されるだろう。ところが何をしなくても太らない体質の人は、運動や食事に留意する必要がない。また必要もないのにそんな面倒なことを進んでやろうという人は、それほど多くないはずだ。だから年齢を重ねるにつれて、体力が次第に衰えていく場合が多い。意識的に手入れをしていないと、自然に筋肉が落ちて、骨が弱っていくものなのだ。何が公平かというのは、長い目で見てみないとよくわからないのである。これを読んでいる人の中にも、「いや、ちょっと油断するとすぐに体重が増えてしまって・・・・」という悩みをお持ちの方がいらっしゃるかもしれない。しかしそれは、前述したような理由で、むしろ天から与えられた幸運なのだと、ポジティブな方向に考えるべきではないだろうか。赤信号が見えやすいだけラッキーなのだと。まあ、なかなかそんな風に思えないですけどね。』

「走ることについて語るときに僕の語ること」(村上春樹/文芸春秋)

プラス思考で、模擬結果も考えましょう!!

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