生徒との面談を1万件以上行いました。
その時に、痛感したのは、人間の感情を変えると簡単にいうことがいかに不遜なことであるかということ。
「自分では自分をくすぐれない」という研究があります。
これは、運動を指令する大脳皮質の運動野から、皮膚感覚を感じるところに「これはおまえ自身がやっていることだからくすぐったくなるな」というキャンセル信号が伝わっているからです。また、強盗が入ってきて「オイ!」とくすぐられても、くすぐったくはなりません。
くすぐったいと感じるのは、おそらく人間だけ。人間の脳というのは、それ一つとってみても高度な働きがあるということです。
本来学習とは楽しいもの
人からやれといわれるより「自分から勉強しようと思って勉強した」ほうが成績は伸びます。
それは命令されてやることはいやなことなのに比べ、自分からやろうと思った勉強は楽しく思えるからです。
では、楽しく学んだほうが学習効果が高まるのはなぜかというと?
それは、「物事を学習することは人間が生き残るために必要な本能」だから。
ほかのさまざまな本能と同じように、快感とセットになっているのです。食べるのが苦痛とか、眠るのがつらいものであったら、人類はとうの昔に絶滅していますね。
「本来は学習とは楽しいもの」。この言葉は大人として教育者として、しっかり理解と反省をしていきたいと思います。
目的と目標
生徒面談を1年間やっていると、最初は「どうやって勉強するか(HOW)」の相談を受けていたのですが、入試の直前ほど「なぜ勉強するのか(WHY)」の相談を受けていました。
逆ではなく、ほとんどの生徒がこの順番であったのに意味深いものを感じました。
心理学では、「目的と目標をしっかり区別して考えること」が重要だとされています。
まず自分が最終的に望んでいる目的とは何なのか、そしてそこに到達するために必要な目標とは何なのかを明確に分けないと、いつのまにか泥沼に入っていることもあるかと思います。
たとえば、模擬試験の結果を上げるのは、「目的」ではなく、目的を達成するための目標に過ぎない。もっと広い視点で考えると、志望校合格も「目的」ではなく、人生を豊かにするという「目的」のための、ひとつの「目標」とも考えられます。