データの読み取りが、なぜ入試問題で問われるか?その答えは、ナイチンゲールが持っています。
□ナイチンゲールは不眠不休ともいえる熱心さで、患者たちの看護にあたった。傷を負った無数の患者たちに包帯を巻くため、8時間もひざまずいた。そして、最初の冬だけで2000人もの臨終に付き添い、重態の患者ほど彼女自身が看護にあたった。あたりが真っ暗になった深夜、ランプを掲げて院内をひとり巡回する彼女の姿は「ランプの貴婦人(ランプ・オブ・レディー)」として後世にまで語り継がれることになる。
□しかし、ナイチンゲールは、看護よりもずっと大切な「仕事」に着手していた。のちに彼女は、「看護の仕事は、わたしたちが果たさねばならない仕事のなかで、もっとも重要度の低いものだった」と振り返っている。戦場の兵士たちは、戦闘によって亡くなるのではなく、劣悪な環境での感染症によって亡くなっていくというのが、ナイチンゲールの結論。それを政府や陸軍に対して認めさせるために使った武器が、数学であり、統計学であった。最初にナイチンゲールは、クリミア戦争における戦死者たちの死因を「感染症」と「負傷」、それから「その他」の3つに分類し、それぞれの数を月別に集計していった。(1855年の1月の場合、感染症により死者が2761人、負傷による死者が83人、その他の死者が324人)
どんな権力者であろうと反論できない、客観的な「事実」を突きつけたのだ。