1万円得したケースと、1万円損したケースでは、人の心に与える重みが全然違う。これを科学的に解明したのが、プロスペクト理論です。プロスペクト理論は、ノーベル経済学賞に輝いた行動経済学の始まりの理論です。トヴァスキーとカーネマンという、2人の研究者によって発見された、損得が発生する際の、人間の意思決定に関する新しい見解を提示した理論です。従来の経済学やマーケティングでは、人間は合理的で、不確実な状況においても、確率を計算し、期待値や標準偏差を求めて、最適解を求めていくと考えていました。それに対して、人間はそんなにパーフェクトじゃない、いろいろ情緒的なものにも左右されるし、リスクの計算も大きく間違える。それを理論化したのが、プロスペクト理論の大きな科学的な功績です。
ある株を所有していて株価が変動したとします。1万円得した時の喜びと1万円損した時のショックの心理的な衝撃度を計った場合、後者の方が圧倒的に大きいと言うのが実験結果で出ています。さらに、予測された期待値を基準とすることが、さらに厄介とされます。1万円得をするはずだと予想していた(誰かもそう言っていた)時に、九千円しか得をしなかった時に、本来なら喜んでも良いはずなのに、大きく損をしたと考える傾向に人間はあるのです。
中学受験の模試結果に心ざわめくご家庭がほとんどですが、上記の心理が万人にあると知っているとメタ認知が可能になります。偏差値は上下するものですが、3P上がったときはそんなに嬉しくないのに、3P下がったときには極端に落ち込むと言うことがあり得るのです。これに期待値も加えると、前回の偏差値は50だったけど、今回は頑張ったので55くらい取れると良いな→結果は45だった=10P下がったかのような衝撃を受けるという感じです。
