答えが一つではない問題
以前、熊本県の中2のテストで出題された「地元のダムの建設に賛成か反対か」という設問に対し、教育委員会は、関係者の気持ちを考えると不適切との意見を出しました。
私は、関係者の気持ち・・の部分はそのとおりですが、こういう問題こそ子供達には必要であると強く思います。中学入試の問題には、教科に関わらず、今の社会に密接した「考えさせる問題」が増えているからです。
それともう一つ。
「答えがひとつではない問題が、世の中にはたくさんあるんだ」ということを早い段階から、子供に伝える必要があると思います。
たとえば「お金には不自由してないが、仕事は忙しい」のがいいのか「おなかが減ることはあるが、好きな趣味をやる時間が多い」のがいいのかは、正解はこっちではなく、個人の考え方の違いを尊重するという姿勢をもとめられるべき、としか言いようがありません。
国際関係の理解の基本もそうなると思います。
「人生には必ずこうしたほうがよいという正解はない。」と思っているだけでも、ずいぶん気が楽になる場面も多いのではないでしょうか。
ディスカッションを重視する学校が多い理由
南アフリカのアパルトヘイト問題。
人種差別による戦争が世界各地で行われている中、解決策は非常に難しいのですが、「対話(話しあい)」によって解決しようとした人がいました。
そのやり方は肌の違いや貧富の差など、利害関係が対立する集団のトップにいる人たち全部を集まる機会をつくること。そして、それぞれの立場をよく理解し、面子(メンツ)やプライドを全部下ろさせ、ひとりの人間として心を開いた対話を通じて、南アフリカの未来を一緒に考えようよと語りかけを続けたということです。
話し合いがしつこく続けられているうちに、自分と考え方の違う人たちと対立したり、攻撃したりしても、未来がそこにないことにみんなが気付いたそうです。
つまり、今まで絶対に許せない思っていた敵であっても、相手の主張を聞き入れ、互いに譲り合うことが結局は未来につながることに気付き、最終的にアパルトヘイトが解消されたのです。
好奇心が成績向上の原動力
「人間の一番人間らしい状態にあるのが子どもです。」
司馬遼太郎さんの言葉です。
子どもは、すぐに口にものをいれようとします。
熱いスープにも、指をつっこんでみようとします。
虫の様子をあきずに何十分も見続けます。
このような「好奇心」を私たち大人も忘れてはならないと思います。
私は国語の教師ですが、たまに理科のテキストを読むと、とても面白く感じることがあります。
教えなきゃ、成績をあげなきゃという気持ちではなく、興味をもって物事を見るからなのでしょう。
「目」とは教育の産物である。(ブルデュー)
アメリカ アンテロープキャニオン