徒然草
『徒然草』第百二十三段の現代語訳をご紹介します。
古典から、生活の原点を学ぶことができます。
『人間として、生きていくために必要なことと言えば、第一に食物、第二に衣服、第三に住居だ。人間の重要時はこの三つ以上にはない。飢えず、寒くなく、風雨の害に侵されないで、静かに日を送るのが、人間の楽しみなのだ。ただし、人間には皆病気がある。病気にかかればその苦悩は耐え難い。だから病気治療のことを忘れてはならない。以上の三つに治療のための薬を加えて、この四つのことを手に入れないのを貧乏とする。四つのことに不足しないのを富んでいるとする。四つ以外のものを求めて、あくせくするのを贅沢だとする。この四つのことを切り詰めて生活するならば、誰が不足を感じることがあろうか』
私たちはいつの間にかぜいたくになってはいないでしょうか。
枕草子
「古典から学ぶ」パート2です。
『枕草子』七十二段「ありがたきもの」の現代語訳をご紹介します。
『ありがたきもの。舅(しゅうと)にほめられる婿(むこ)。また、姑(しゅうとめ)にかわいがられる嫁。毛がよく抜ける銀の毛抜き。主人の悪口を言わない従者。ほんのちょっとした癖もない人。容貌、性質、姿かたちも優れていて、世間をわかっていくとき、少しの非難すべき点もない人。同じところに住んでいる人で、お互いに相手を優れたものとして尊敬しあい、わずかのすきもなく気をつけていると思う人・・・』
ありがたきは、漢字で書くと「有難き」。めったにない、という意味になります。
ありがたいと思える人や場面があったとしたら、感謝の気持ちを持つことが大切です。
貧窮問答歌
「古典から学ぶ」パート3です。
『万葉集』巻五・八九九の歌をご紹介します。
『万葉集』のなかでも、人一倍、子どもを愛し、歌にしたのは山上憶良です。
『すべもなく/苦しくあれば/出で走り/いななともへど/こらに障りぬ』
どうしようもなく病で苦しくてもう死のうと思うが、踏みとどめているのが子どもであるという意味です。病に苦しむ憶良は、この歌を詠んだときは70歳前後と想定されています。自分だけではなく、普遍的な親の愛情をうたったのではないでしょうか。