ピアニストのフジコ・ヘミングさんの幼いころの話。
フジコさんは、幼いころから「天才少女」として有名でした。ところが、母親は「それくらい弾ける子どもは、外国に行けばゴロゴロいる」と全くほめてくれません。17歳のときのコンサートを成功させたときも、やはりほめ言葉はありませんでした。
ところが、ドイツに音楽留学をすることになった彼女を、憎まれ口で見送った母親。その目に光っている涙をみたときに、初めてフジコさんは
「母はひょっとしたら愛情表現が下手なだけかもしれない」
と気づいたといいます。
星野富弘
クラブ活動指導中のけがで、首から下が動かなくなってしまった星野さん。長い入院生活のなかで、口に筆をくわえて詩や絵を描くことに希望を見出します。
片時もはなれず介護をしてくれるお母さんに送った「なずな」という作品があります。
『神様がたった一度だけ
この腕を動かして下さるとしたら
母の肩をたたかせてもらおう
風に揺れるぺんぺん草の
実を見ていたら
そんな日が本当に
来るような 気がした』