墨絵は下書きをしません。紙に向かって一発勝負、描き直しはできませんから、高い集中力が必要になります。筆の勢いが大事になります。殴り書きをしたかのような墨汁の掠れ具合も、独特の味わいになります。しかし勢いがありながら、同時に繊細でなければなりません。ですから、本当に高い集中力がいるのです。
では墨絵画家は、どのようにして集中力を得るのかといえば、墨をする行為がポイントになります。墨をすりながら心を澄まし、気持ちを高揚させていきます。絵は一気に描きますが墨は長い時間をかけてすります。1時間も2時間もかけて墨をすりながら、心が極まった段階で初めて筆に墨汁を含ませて紙に向かいます。
心の準備時間を十分に置くから、爆発的な集中力を発揮でき、良い絵も描けるのです。