2010年6月にNASAで実施された実験。
4カ国から集められた6人の男性が、火星に行ったと仮定して、小さなコンクリートの建物の中で17ヶ月を過ごした。その中で報告のあった対立は49件。調査の対象にはならなかった些細で気に障る対立を含めると、もっとあったであろう。
ここに一つだけ、ほぼ確実に起こる特別な対立がある。クルーと地上管制との対立だ。これは、「地上とクルーの断絶」と呼ばれる。
クルー「地上の連中はやたらと指示してくる。理不尽で、融通が利かなくて、こっちの実情を知りもしないで不可能なことを言ってくる」
地上管制官「なんだってあいつらはああも気難しいんだ。ただこれをやってくれって頼んでるだけじゃないか」
さらに、火星のシミレーションでは、テキスト(文字)メッセージを送ってから返事が返ってくるまで40分もかかる。遠く離れた宇宙からでは、電話やビデオ通話もできないので、会話はテキストメッセージでするしかない。スムーズなやり取りは望めず、物足りなさが残る。声のトーンやボディランゲージから汲み取る微妙なニュアンスが全て取り除かれたテキストのコミニケーションでは、ほぼ確実に誤解が生じるという点も押さえておきたい。
