哲学者、梅原猛さんが語る「和」。聖徳太子も「和をもって貴しとなす」といっていますし、元号は「令和」でもあります。
□「和」というのは、みんなが同じことをするという意味ではないのです。本当の「和」というのは、羅漢さんの「和」だと私は思っています。五百羅漢というのは、お釈迦様の死後の経典編集に集まった弟子が500人いたといわれることからきていて、それぞれが独自の能力を持ち、それを生かしてお釈迦様の教えを後世に伝えていったとされています。この五百羅漢をかたどった仏像が日本のお寺にも造られていますが、それをよく見ると、羅漢さん一人ひとりの顔がすべて違っています。いずれも個性的で、てんでばらばらに面白い顔をしている。ところが全体としてみると、じつにみごとな調和をかもしだしているのです。このような「羅漢の和」こそが、理想の「和」だと思います。
ニュースやインターネットでは、少しでも意見や考え方の違う人がいると、総攻撃をしてとことん追い詰める報道がなされます。時には、「和」の精神を考えてバランスをとらないと危険な方向に流れていくのではと思います。
個人が大切にされる時代を。
そして、自分と違う意見の人であっても、個人を尊重できる世の中であるべき。