心理学者のM・レッパーたちは、保育学校に通う3歳から5歳の子どもたちを対象に実験を行いました。
子どもたちを2つの条件に振り分けたのです。
「ほうび(この場合は賞状)あり条件」と「ほうびなし条件」です。
最初の段階では、描いた枚数は、どちらの条件とも2、3枚で、差は見られませんでした。
しかし、絵の質的なレベルを3人の専門家に評価してもらったところ、「ほうびあり条件」の子どもたちの絵のほうが、すこし低かったのです。
子どもが自由に絵を描くときに発揮される表現力が、ほうびという外的報酬によってそこなわれたといっていいかもしれません。
さらに、時間がたつと「ほうびあり条件」の子どもたちの描写時間が、事前観察での平均20%~10%以下へと、大幅に落ち込んでしまいました。
絵を描くことへの興味が、ぐんと低下してしまったのです。
「今度成績があがったら何か買ってあげるから頑張って!」は、勝負どころのカンフル剤(=奥の手)と考えたほうが良いでしょう。