「記述力強化のための教育講演会」を開催したことがあります。スペシャルゲストとして、今でもお付き合いのある朝日新聞、朝日小学生新聞の一色清さんをおむかえしました。
□「文章を書く時に考える5つのポイント」
①「だれが読むか」
・たとえば、相手が先生か友だちかで、書き方は違う。友だちなら省略してもわかる部分があり、それ
ほど丁寧な書き方をしなくてもいいが、先生ならば、丁寧に書くことが必要になる。一般的に、不特
定多数の読者を相手にするならば、丁寧な書き方になる。
②「テ・メ・エを決める」
・「テ・メ・エ」とは自分の造語で、「テーマ・メッセージ・エピソード」のことである。
1「テーマ」……「天声こども語」の場合、何について書くのかを決めるのが大変で、小学校高学年の子どもを想定して、何を書けばわかるか、喜ぶかを考える。木曜に原稿を出すが、木曜の朝の新聞からテーマを探したり、通勤時に考えたりする。突然テーマが降ってくる時もある。これは料理を作る場合、何にするかを決めるのと同じようなものだ。作文を書く時も、テーマを決めるのは難しい。読書感想文の場合は、課題図書があるならよいが、自分で何の本を読んで書くかを決めるのは難しい。
2「メッセージ」……何を伝えたいかも大事である。
3「エピソード」……何をもって伝えるかも大事である。料理なら、どの材料をそろえたらいいかを考えることと同じだ。
③「4コマ漫画のように(起承転結)」
・一つの文章を書くために、ストーリーを作ることが大切である。
・朝日新聞の「4コマ漫画」としては、昭和期に「サザエさん」があったが、今は「ののちゃん」がある。朝日小学生新聞の場合は、「ジャンケンポン」が長期連載により、ギネスブックに載った。
・「4コマ」は、リズムよく流れるのが特徴である。「起承転結」は中国の人が詩を書く時のやり方だが、
全てがこれにあてはまるわけではない。「序論・本論・結論」という三つの部分で書くやり方もある。
・「ののちゃん」の漫画を見ると、「起…テーマを示す」、「承…テーマを膨らます」、「転…場面を変える」、
「結…締めくくる」という流れがわかる。
④「字数を決める」
・文章を書く時は、原稿用紙を何枚使うのかを決めるのがふつうだが、「天声こども語」の場合は「374字」、「天声人語」の場合は「606字」と、字数がぴったり決まっている。また、「。」や「、」や閉じるカギカッコなどが文頭に来てはいけないなど、ルールが多い。しかし、ルールの多い方が、文章修業にはよい。今はネットなどに長々と文章を書くことがあるが、人に見せる文章で美しいものにするならば、だらだら書いてはいけない。
・長く書いたものを刈り込んだり、間違いを修正したりすることによって、文章は良くなる。これは植木のせん定と同じである。植木は放っておけば、暗く鬱そうとしてしまうが、葉や枝を切り落として、風通しをよくすればうまく育つ。一方、文章も刈り込むことが必要だが、せん定すると全体が崩れたり、「。」や「、」が文頭に来たりするなどの変化が起きることがある。また、全体の流れや印象が変わってしまうこともあるので大変だが、それを整えるのも文章修業の一つである。
⑤「何度も読み返す(推敲・すいこう)」
・「推敲(すいこう)」とは、文章の字句を何度も練り直すこと。中国のある詩人が門を「推す」と表現するか、「敲く(たたく)」と表現するかで迷った時に、ある人の助言を得て「敲く(たたく)」に決めたという故事に基づく。
・「寝かせる」
書き終えた文章はまず「寝かせる」ことが大事である。なぜ「寝かせる」のかというと、人は同じ心でいつも安定しているわけではないからである。たとえば、ある時は激しい思いになったり、ある時は暗い気持ちになったりと色々な状態になる。それが1日経つ、あるいは2、3時間でもおくと心が変化してくる。そして、その時点で文章を読み直すと、恥ずかしく感じる部分もある。だから、書いたものを寝かせて、心の動きが変わった時に読み直し、良くないところやリズムのおかしい部分に気づくということが大事なのである。自分は、「天声こども語」を吉田由紀さんに送る前に2、3時間おき、その後読み直して、表現を修正している。
・「音読する」
文章を書いた後、社内では「音読」ができないので、家で「音読」することがある。声に出すことで、文章のリズムの悪い部分がわかる。
・「人に読んでもらう」
自分はデスクの人に書いたものを読んでもらう。読んでもらった人の感想を聞くのも、文章をより良いものにする一つの方法である。


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