夏目漱石「三四郎」の主人公の「この国はいずれほろびるね」という有名なセリフがあります。
漂流者の生きかた(五木寛之・姜尚中 /東京書籍)を読みました。
「広辞苑では、「鬱」が「草木の茂るさま。物事の盛んなさま」という意味になっています。「鬱勃たる青年志士の野心」、「鬱蒼たる樹林」という言い方もある。こうした「勢いよく盛んなさま」という意味は鬱の第一義で、「鬱々たる気分」というような否定的な意味の方は本来は第二義なんですよ」
「それから、僕の感覚では、鬱の中には、「憂」という感情と、「愁」という感情のふたつがある。「憂」というのは外に向けて発せられる気持ちであって、国を憂えるという「憂国」の「憂」です。子どもの教育はこれでいいのか、地球環境はこのままでいいのかと、強く憂うるホットな感情です。もうひとつが「愁」です。人間の生き方を考えるときに、人間とは何かという問いに、おのずと浮かび上がってくる、しーんとした感覚。それが「愁」だと思うのです。どこかクールな感情ですね。このホットとクールのふたつの面が鬱にはあると思うのです」
「今の若い世代に不満を持つとしたら、皆自分探しというものは一生懸命するけど、「憂」という、他者へ向けての気持ちが弱いのではないかな」