2004年、京都府舞鶴市の山間部は、台風23号の上陸によって大きな被害を受けました。強風に川の氾濫、さらには土砂崩れ、多くの田畑が土石で埋め立てられ、木々はことごとく倒されました。
倒れた木々の一本に、高さ10mの大きなサクラの木がありました。この木を見た人たちは、すでに木は死んでしまったと思い、ほかにやるべき復旧作業がたくさんあることもあって、そのままにしておきました。
ところが、翌年の春、思いがけないことが起こります。根の大部分がむき出しなっているそのサクラが、鮮やかなピンク色の花を咲かせたのです。地元の人は「信じられない」と驚くばかりでした。
専門家の人の話によると、サクラは養分を運ぶ導管がらせん状に通っているので、一部でも根が土中とつながっていれば、枝先まで養分が届くことのこと。ただ、鮮やかな花を咲かせたのは「何とか生き残ろう」という必死さに表れではないかと話したといいます。
田畑が土砂で埋まってしまった農家の人たちは、サクラがあのような姿になっても負けないで生きていることに、復興に向かう元気と勇気をもらったそうです。