友人をつくる
天皇陛下の執刀医で有名な天野篤(順天堂大学 心臓血管外科教授)さんのお話。講演会などでは、私立中学に入学するのは、地元と学校の両方の友人を作ることができるという話もしています。
『医師としては人と出会うこともすごく大切。大きな大学病院の医者はどうしても接触できる人が限られる。でも私はまんべんなく、どこにも首をつっこんで、いろいろな人と接触してきたので、そういう人々からもらう知恵や経験を「あの話は我々でいうとこれだな」というあてはめ方ができる。今の世の中は情報や流行が人を囲い込むところもあって、携帯電話だったらスマホを持ってはいけないとか、そういうグル―ピングが以前よりも新しいものを作りにくくしている。その殻を自分から破るのか、何らかのアクシデントで破らざるを得なくなるのか。いずれにしてもそういう経験がないと、人は未来に向かって変わることが難しいんじゃないかと思う。』
『「人類の大発見と言われるようなもののヒントも、日々患者を診たり治したりするところから出てくるものだと思います。診察と執刀はすべての原点です」
大隈重信のエピソード
目上の人への「礼儀作法」の重要性を示すエピソード。
「明治41年秋にアメリカのプロチームが来日し、早稲田大学と野球の試合をすることになりました。このとき始球式を行ったのが大隈重信。年齢は70歳だったといいます。早稲田大学の1番バッターは、『先生の投げた球をボールにしては失礼』と敬意を表して空振りしました。この空振りが恒例となり、今でも続いています」
ストロングタイズ(強い結びつき)」と「ウイークタイズ(弱い結びつき)」という言葉があります。
前者は家族や親戚、親しい友人などで、後者はそれほど親しくない知人とのつながりを意味します。
その2つを比べてみると、ウイークタイズでつながっている人からは、身近にない新しい情報が得られる可能性が高いと言えます。
しかも、ウイークタイズで結ばれている知人の社会的地位や所得が高いほど、いい就職先が見つかる可能性が高いというのです。
日本人は外人と比べると、なかなかウイークタイズを作ることが苦手です。これは、日本人が身内に対する「安心」を大切にし、それ以外の他者に対する「信頼」を育んでこなかったことに起因する問題でもあるという分析をする形もいます。
6年の間、先輩・後輩の絆を深められる、また母校には恩師がずっといらっしゃるという意味で、一生のウィークタイズをつくれるという意味でも、私立中学受験は意味があるのではないかと思います。